こんにちは!チョコレートくん(@chocokuncom)です。
まずこの記事にたどり着いたということは、チョコレートのパッケージ裏の成分表示を見て疑問や不安を持った方が大半かと思います。「乳化剤って何?」「たくさん食べても大丈夫なの?」と。
人間の口に入るものだから、安全であって欲しいと思うのは当然ですよね。
今回はチョコレートの原材料「乳化剤」について解説します。メーカーによっては「レシチン」と表記しているところもありますが「乳化剤」と同じ意味です。
乳化剤(レシチン)とは?
チョコレートに含まれる「乳化剤」は大豆由来の油です。稀に、PACARI社のようにヒマワリ由来のものを使用するメーカーもあります。食品添加物に指定されてますが“科学的に合成されたものでなく、天然由来のもの”です。
故に「体に入っても安全なもの」なのでご安心ください。
チョコレートの構造をご説明します
乳化剤を使う理由を説明する前に、チョコレートの構造を理解する必要があります。
チョコレートを製造する過程でメランジャーと呼ばれる機械を用います。これで、カカオ豆(カカオの粒子とカカオバターが含まれる)と砂糖を数日かけて細かくすり潰していきます。
写真がテンパリング、成形を経て完成したチョコレートとなります。
顕微鏡でチョコレートの構造を見てみましょう。
油であるカカオバター中に、カカオの粒子と砂糖が分かれて混在しているだけだと分かります。
これが「安定したチョコレートの状態」となります。
肉眼では、カカオバターの中にカカオの粒子と砂糖の結晶があるなんて分かりません。また、20ミクロン以下まで細かくすり潰していくので、チョコレートを口の中に入れてもなめらかな口どけです。繊細な人間の舌でもカカオの粒子と砂糖の結晶を感知できません。
ここからが本題。
乳化剤を使う理由
「乳化剤」を入れる理由。それは、チョコレートを分離しづらくするためです。
急激な温度変化が起こると、チョコレートが分離してしまう可能性があります。分離すると食感がざらつき、当然味にも影響が出ます。また、表面が白くなってしまうブルーミング現象が起こる恐れがあるのです。
ちなみに分離した状態が上図のようになります。
カカオの粒子も、砂糖の結晶もお互いに結合してグループを作ります。これでは大きさが20ミクロンを超えてしまう。食べた時にざらつきを感じてしまう理由がそこにあります。
乳化剤には「カカオの粒子とカカオバター」「砂糖の結晶とカカオバター」をそれぞれ結合させる働きがあります。
油分の中で「カカオの粒子」と「砂糖の結晶」がまばらに点在する状態を保つことができるのです。つまり、目指すべき安定したチョコレートの構造。
乳化剤がチョコレートの味に与える影響
乳化剤は体に入っても安全なもの。
チョコレートの結晶構造を安定した状態に保つために必要なもの。
ということをご説明しました。
あと、気になることといえば、乳化剤が味に与える影響ですね。
乳化剤を加える量はチョコレート全体の重量に対して、0,2%〜0.5%程度。作り手さんにお話を伺うと味に影響がないという意見が大半です。
ただ、私の経験から言わせていただきます。味覚レベルが高い方にチョコレートをテイスティングさせると乳化剤が入っていることを見抜きます。チョコレートの美味しさに対して、ごく僅かですが影響はあります。
乳化剤は使うべきか?使わないべきか?
この議論をするのは平行線を辿るので野暮なものです。
チョコレートをベストな状態(分離などのトラブルなし)で消費者に食べてもらうこと。を考えれば乳化剤の役割は大変重要なものです。
しかし、イタリアのドモーリ社など、カカオの香りを損ねる不純物だと認識し、乳化剤不使用でチョコレートを製造するメーカーが存在するのも事実。アメリカのビーントゥバーブランドにも数多く見られます。
作り手によっても何を大切にするかによって意見が分かれます。正解がないだけに、これもチョコレートの面白いところです。